岡村靖幸 / 家庭教師 / EPIC 1991
今まで自分はダンスフロアでくらってしまった経験は多々あるのですが、印象深くそして今でも心の拠り所にとまでは大げさですが、そんな体験のお話を。
もうかなり前になるのですが、並木橋にFEELというクラブがありました。特にDJが誰とかどんなパーティーとかの下調べはしないで、何の気なしに友人達と連れ立って行きました。
いい感じで酒も回り小粋にステップを踏みつづけていたのですが、ふとものすごくなじみのあるフレーズが聞こえてきました。その瞬間今まで感じたことのない驚きと歓喜が湧き出しました。それはPRINCEのEROTIC CITYという曲で、自分にとっては密やかな宝物のような曲だったのですが、今まで自分の生活の一部としてひっそり寄り添っていたものがいきなりクラブで、しかも他のアンダーグラウンドミュージックに混じって突然その曲が降りてきて、周りのみんなもどんどんマッシブに踊り始めたのを目の当たりにして、それまでの自分のクラブ感が一変したのでした。例えるなら未踏の大地で突然親友に出会ったようなそんな衝撃だったのです。当時は自分にとってクラブ、そしてDJというのは向こう側な存在だったのですが、その距離が一気に縮まり、もしかしたら自分もDJできるかもしれないとはっきりイメージできた瞬間だったのでした。
でこのアルバム。
これだけ音楽の持つ喜怒哀楽や魑魅魍魎、そして自分の思い入れが詰まった作品はそうはないのですが、ラストのペンションという曲を最近DJの時にかけます。そしてこの曲をかけた時こそ自分にとって最高の音楽体験なのであります。積年のあらゆる感情が入り乱れた究極の公私混同ですが、それこそが本当のDJの醍醐味だと思うのです。
FEELで降りてきたパーティー道の道しるべが鮮やかに何度でも蘇ります。
最近復活した岡村ちゃん。
もう一度このミラクルを起こせたなら、何度捕まっても一生ついていきまっせ!